2021/02/23

長期株式投資のベストプラクティスが書かれている本、ジェレミー・シーゲル教授の『株式投資の未来』、そして『株式投資』から学んだことを数回に分けて整理し、自分の血肉に変えていきたいと思います。
第5弾の今回は株式への投資手法についてです。
シーゲル教授は書籍を通じて、投資リターンを最大化するためには株式への長期投資が最も最善であり、投資手法としては「買い持ち&配当再投資」をおすすめしています。今回はその理由について、整理したいと思います。
※シーゲル本まとめ記事です(随時更新中)↓
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Contents
バイ・アンド・ホールドが最善の投資手法である理由
理由①:景気循環を予測できないから
株式市場に身を置いている人の大多数は、保有銘柄の株価が将来上がるのか下がるのかを予想するために経済状況に注目し、発表される経済指標を見て、今後の経済動向を予想・予測します。
それは個人投資家だけではなく、景気予測も専門としたアナリストや学者等、多くの人が様々な手法を使って行います。
しかし、将来の景気動向を的確に充てることは容易なことではありません。むしろ我々を混乱させ、損失を被らせます。
株価が相当下落しても景気が後退しなかった「誤報」も何度かあるが、株価はほぼすべての景気後退の前に下落し、景気回復の兆候が見えてくると力ずよく上昇した。もし景気循環を正しく予測できるなら、本省を通して推奨しているバイ・アンド・ホールド戦略に勝つことができるだろう。
景気と株価は一致して動きませんが、株価は景気が後退する前に必ず下落し、景気回復の兆候が見えてくると力強く上昇するとう関係性があります。
よって、景気が後退する兆しが見えてから保有株式を売却し、景気回復の兆しが見えてら買戻せば、リターンを最大化することができます。
しかし、景気循環を正しく予測するために何十億ドルも投資しても、景気の転換点を正しく予想できたケースはないようです。そして仮に転換点を判定できたとしても、既に行動を起こすには遅すぎるのです。なぜなら、株価は先の景気を織り込んでいるからです。
つまり、景気循環を予測しながら売買を繰り返し、そのたびに損失を被り、機会損失を噛みしめるならば、しっかり分散されたポートフォリオを組んで17年以上買い持ち&配当再投資をし続けた方がマシということになります。リターン期待値も年率9~10%近くになりますし。
理由②:売買コストを最小限にするから
シーゲル教授は『株式投資』では、バイ&ホールド戦略と相対する戦略であるタイミング戦略(200日移動平均線をベースにしたテクニカル手法)の性能を、NYダウとナスダックのチャートを使うことで評価しました。
NYダウのチャートで行ったバックテストの結果は、下記の通りでした。
- バックテストを実施した1886年1月から2006年12月の期間では、タイミング戦略の10.21%の年利回りは買い持ち戦略の9.68%を上回っている
- タイミング戦略は1029年~1932年の大恐慌を回避した(最大の功績)
- 1029年~1932年以外の期間は、タイミング戦略の利回りは買い持ち戦略より0.43%下回る
- タイミング戦略の取引コストを考慮すると、全ての期間においてタイミング戦略の利回りは買い持ち戦略の利回りを下回る
- 売買コストが0.1%上昇するたびに、年間の複利利回りは0.29%低下する
つまり、タイミング戦略は大きな損失を回避することはできるが、トレンドが発生していない期間では多くの小さな損失を被り、更に取引回数が膨らむことで売買コスト(売買手数料やキャピタルゲイン税)が膨らみ、結果としてトータルリターンは押し下げられるようです。
移動平均線を利用したトレードは、あくまでトレンドが発生しているときにこそ有効な手法であって、レンジ相場の場合は無駄に取引を発生させます。
しかも、長期間にわたって機械的にトレードするのは現実的ではないでしょう。人間には欲や感情があるため、ルールを順守することは並大抵のことではありません。
であるならば、日々チャートを追っかけて売買のタイミングを探るより、ホールドし続けて配当を受け取り、再投資したほうよいでしょう。
理由③:リターンの源泉は配当のため
1871年から2003年にかけて、インフレ調整ベースで、株式の累積リターンの97%は、配当再投資が生み出してきた。値上がり益が生み出した部分は3%にすぎない。
復習となりますが『②配当の圧倒的重要性』でも記載した通り、投資家リターンを押し上げる最大要因は配当の再投資です。
いつまで続くか分からない下落トレンド時に保有株式の比率を下げて現金比率を上げることで、受け取れたはずの配当を受け取らないことは、結果としてトータルリターンの押し下げに繋がります。
更に、配当は下落相場時のプロテクターにもなり、上昇相場開始時のアクセルにもなります。
減配リスクの低い銘柄を見つけることができるのであれば、買い持ち戦略では暴落時を経験したほうがリターンを押し上げることができます。
まとめ
シーゲル教授は下記のことを教えてくれました。
- 景気循環を予測することはできない
- 仮に景気の転換点を判別できたとしても、既に株価は織り込み済みで行動するには遅すぎる
- タイミング戦略は大暴落を回避することはできるが、長期的には売買コストがリターンを押し下げる
- 長期投資のリターンの源泉は配当であることを忘れてはならない
感情や欲を消して、悲観的にも楽観的にもならず、成長の罠に惑わさることなくトレードできるのであれば、200日線に則ったトレードも悪くないでしょう。
しかし、それを30年以上続けることができるのかと自問自答すると、回答はNOでしょう。
愚直に配当再投資を繰り返して複利の恩恵を受けることが、兼業投資家にはぴったりなのかもしれません。
ただ、バイ&ホールド戦略はあくまで長期投資の戦略です。
短・中期のスイングトレードにとっては、移動平均線は強力なツールになると信じています。
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