2022/01/17

長期株式投資のベストプラクティスが書かれている本、ジェレミー・シーゲル教授の『株式投資の未来』、そして『株式投資』から学んだことを数回に分けて整理し、自分の血肉に変えていきたいと思います。
第2弾の今回は配当の重要性についてです。
株式投資で利益を求める時、最初はどうしてもキャピタルゲインをイメージしてしまいます。年率3%といったインカムゲインと比較すると、「そんなの1日の上昇取ってしまうよ」と思ってしまいます。
しかし、長期的に株式投資に生業としていくならば、インカムゲインの方が圧倒的に重要のようです。
※シーゲル本まとめ記事です(随時更新中)↓
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Contents
配当の働き①:リターンを押し上げる
リターンの大部分を生み出す配当再投資
1871年から2003年にかけて、インフレ調整ベースで、株式の累積リターンの97%は、配当再投資が生み出してきた。値上がり益が生み出した部分は3%にすぎない。
シーゲル教授は株式市場の過去のリターンについて、驚くべきデータを公表してます。
1871年~2003年のトータルリターンのうち、キャピタルゲインが生み出したリターンはわずか3%しかないという事実です。残りの97%は配当再投資から生まれていました。
衝撃です。
1871年に株式に1000ドル投資したとします。
配当再投資をしなかった場合、122年後に売却して得らえるキャピタルゲインは約25万ドル。122年間で得れれる配当は約9万ドル。よってトタールリターンは約33万ドルとなります。
それが配当再投資した場合となると、インフレ調整ベースでトータルリターンはなんと約800万ドルになります。
何この差。
平均年率リターンは配当再投資の場合約7%、配当再投資しない場合は約4.5%。
何この差。
なぜ配当再投資がリターンの大半を生み出すのか
配当再投資をするとしないとでなぜこのような差がでるのでしょうか。
それはまとめ記事第一弾「成長の罠に陥らずに長期的リターンを高める方法」でも記載した通り、配当を再投資することで保有枚数を積み上げられることにより、下記の好循環が働くためです。
配当再投資することで保有株数が増える
↓
受け取れる配当が増える
↓
増えた配当で再投資することで更に株数が増える
↓
受け取れる配当が更に増える
↓
以下、無限ループ
しかし、配当再投資の実施有無でトータルリターンが20倍以上も上昇するとは。。
配当の働き②:下落相場での保護
プロテクターとアクセル
もう一つの配当の重要な役割が、株価下落局面での投資家の保護です。
株価が下落する
↓
配当再投資で余分に株数を積み増せる
↓
保有株価の平均購入単価を押し下げる
下落局面でも配当再投資を続けると、平均購入単価を押しさげ、何もしないときに比べて、含み益の減少・含み損の増加を緩和します。そして、株数が増えているため、上昇時には大きなリターンをもたらします。
ドルコスト平均法(ナンピン買い)のようなものですが、通常のドルコスト平均法と違って、配当でナンピン買いしているので、自分の懐が痛くなりません。ナンピン買いの場合は更なる含み損の悪化を招く可能性も十分にあるため、ある程度のリスクを背負っていると考えられます。
暴落がリターンを増やす
配当再投資は下落相場でプロテクターの役割となりすが、なんと下落すればするほど、大暴落を経験すればするほど、さらに長期的リターンを押し上げます。
投資期間を長くとり、配当を再投資する投資家にとって、下落相場はさほど打撃とならないだけでなく、この時期を通過することで、かえって資産が増える。
シーゲル教授の『株式投資の未来』では、1929年の大恐慌が起こった場合と起こっていない場合を比較して証明しています。結果、大恐慌がなかった場合、大恐慌を経験した投資家が得たリターンの60%を下回るようです。
当たり前かもしれないですが、暴落時は銘柄の実力に関係なく売られる場合が多く、その時の銘柄への期待値は大きく下がっています。そして期待値は下がっているためもちろん株価は下落、配当利回りは多少の減配があったとしても上昇します。
よって、いつも以上に高利回りの状態で株数を増やすことができます。ここで買いに入れれば、投資家リターンの基本原則的には最高の条件での買いとなるので、長期的リターンを押し上げます。
さらに
相場の変動は、投資家心理にはこたせるが、長期投資家には利益をもたらす。タイミングを見計らう必要はなく、ただ配当を再投資することで実現できる利益だ。
購入するタイミングを気にしなくてよいのです(ここテストに出ます!)。
弱気相場で動揺売りすることなく配当再投資をし続ければ、誰でも驚異的なリターンを得ることができるのです。
配当の働き③:事業健全性の証明
シーゲル教授は『株式投資の未来』で、投資先を選定する際は、配当が企業のコアな戦略となっているかどうかを重視すべきと述べています。それが生き残る企業である可能性を高めてくれるからです。
配当を支払うことで、株主と経営陣との間に信頼関係が築かれ、収益に関する経営陣の発言が裏づけられるからだ
配当を支払っているかぎり、事業は黒字であって、決算に間違いはないと目に見える形で証明できる
配当が支払える → 健全なキャッシュフローがある → 事業は順調 というロジックです。
自社株買いも株主にとって利益となりますが、配当ほど信用できない、とも述べています。自社株買いは他の理由で中止することができるためです。
まとめ
シーゲル教授は下記のことを教えてくれました。
- 長期投資のリターンの97%は配当再投資が生み出す
- 配当利回りの高い投資先は下落時にプロテクターの役割を果たす
- 市場が悲観に襲われているときこそ、配当再投資をすることでリターンを積み増せる
- 配当再投資のタイミングは気にしなくてよい
- 配当は事業が順調である証拠
短期でみたらキャピタルゲインの方がリターンが高いかもしれないが、長期の視点で考えると見ると、配当再投資の方が圧倒的にリターンが高い。投資スタイルの変更を考えさせらます。