2022/01/17

2018年12月3週、米債権でついに逆イールドが発生しました。
株式市場暴落のフラグと言われる逆イールドが発生したことで市場参加者はどよめきましたが、具体的にいつ頃リセッションがいつ頃起こりそうか過去を調べてみました。
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Contents
逆イールドとは
逆イールドとは、過度な金融不安、急激な政策変動により短期金利が急騰し、長期金利を大きく上回った状態のことです。債券市場において、一般に残存期間が長くなるほど投資資金の固定化によるリスクなどを伴うため、長期金利は短期金利よりも高くなります。しかし、様々な要因が生じて遠い将来より近い将来のほうがリスクが高くなると市場が予測した時には、長期と短期の金利が逆転します。
逆イールドとは短期債権の利回りが、長期債権の利回りが上回った状態のことを意味し、この現象は景気後退(リセッション)の前兆と言われています。
なぜ、このような逆転現象が発生するのでしょうか。
短期債権は政策金利の動向に左右されると言われています。長期債券は安全資産として購入されることが多く、株式が高騰しすぎていたり、株式の配当利回りが債権のそれより下回っているときに、株式から長期債券へと資産が流れていく傾向にあります。
逆イールドはこれらの動きがゴールに近づいてきていることを指していると考えられます。つまり、利上げが終盤に差し掛かってきており、かつ株式市場が天井付近で暴落不安が出てきたということです。
実際に、FRBのパウエルさんは11月28日に今の金利が中立金利に近づいてきていると発言し、近いうちに利上げ打ち止めの可能性を示唆しました。10月の講演ではまだ中立金利と距離があると発言されていましたが、この1カ月で距離縮まったようです。
株式市場も米債利回りが3%を上回ったところで、2月と10月に大きな下落を見せ、株価天井臭を漂わせています。
では、ここからは具体的に長短金利差と株式の関係を見ていきたいと思います。
長短金利差と株価暴落の関係
10年債?5年債?
長短金利差と株式の関係を見るまでに、1つ整理をしておきたいと思います。
これまでに「逆イールド」なる言葉を使用してきましたが、金利差を計算する際には「10年債利回り-2年債利回り」を使用するのが一般的のようです。先週騒がれていたのは「5年債利回り-2年債利回り」でしたので、正確には「まだ逆イールドは発生していない」とうことになります。
しかし、10年債利回りと5年債利回りでどの程度差があるのかを見てみると、凡人の私には「金利差額」しか違いが分かりません笑。同じように推移しているじゃん。
<米債券10年―2年金利差と米債券5年―2年金利差の推移>
まあそろそろ10年-2年金利差も逆転するでしょうから、ここからは「長短金利差=10年債利回り-2年債利回り」で話を進めていきたいと思います。
長短金利差 vs S&P500指数
1991年から2018年12月までの長短金利差と米株の推移をグラフに起こしてみました。
<米債券長短金利差とS&P500株価指数の関係>
この期間では長短金利差がマイナスになった時期が2回ありました。時期的にインターネットバブルとリーマンショックでしょうか。
そして噂通り、長短金利差がマイナスになって正常化し始めるあたりで株価は下落しているのですね。。
具体的に①,②に時期にフォーカスしてみたいと思います。
①1998年~2003年
この期間のS&P500指数の最高値に緑の縦線を入れてみました。
すごいことに、長短金利差がダブルボトムをつけて正常化に転じたタイミングで株価の下落が始まりました。
長短金利差がマイナスだった期間についてですが、1998年6月に一度マイナスに転じましたが翌月にはプラスに戻し、本格的なマイナス期間は2000年2月から2000年12月の11か月間でした。一度マイナスに転じた月からカウントすると31か月になります。
株価は2000年8月に天井をつけましたので、長短金利差がマイナスの状態のときに(正常化し始めたころに)リセッションが始まったことになります。チャート的にはダブルボトム形成後でドンピシャですが。
ちなみに下落幅はですが、2000年9月の天井1,530ドルから2002月10月の底値768ドルまでの761ドル、下落率で見ると約49%の下落です。2年間でこの下落。。インターネットバブル恐ろしい。。
②2005年~2009年
この期間でも同様にS&P500指数の最高値に緑の縦線を置きました。
①のときほどドンピシャではないものの、長短金利差が底を打って正常化に転じた後すぐに株価の下落が始まりました。
長短金利差がマイナスだった期間ですが、2005年12月に初めてマイナスに転じ、2006年3月に一度プラスに戻しましたが2006年6月にまたマイナスに転じ、2007年5月にプラスに転じて正常化にし始めました。初めてマイナスになった月から、底打ちプラ転するまでの期間は18か月でした。
株価の最高値は2007年10月につけましたので、長短金利差がプラ転して5か月後に株価が天井を付けたことになります。インターネットバブルのときは長短金利差がマイナスのときに株価が天井を付けたことを考慮すると、金利差がマイナスかどうかはあまり関係ないのかもしれません。サンプルが2つしかないので断言できないですが。。
チャート的には長短金利差がしっかり底を形成してから株価が暴落していますので、この点はインターネットバブル時と似ています。
下落幅は2007年10月の高値1,576ドルから2009年2月の底値734ドルまでで約842ドル、下落率は約46%でした。
まとめ
1991年から2018年の期間での、米長短金利差と米株価暴落の関係は下記の通りでした。
- 1991年から2018年の期間で、米債券の長短金利差がマイナスになった(逆イールドが発生した)のは2回
- その2回とは2000年のインターネットバブルと、2007年のリーマンショック
- 長短金利差がマイナスに転じてから底打ちプラ転するまでの期間は
- インターネットバブル:31カ月
- リーマンショック:18か月
- どちらも長短金利差が底を打って正常化に転じた後すぐに株価の下落が始まった
- ただし、「正常化≠長短金利差がマイナス」であり、「正常化=長短金利差の底打ち」の方が正しい
- 株価の下落幅・率は
- インターネットバブル:下落幅約761、下落率約49%
- リーマンショック:下落幅約842ドル、下落率約46%
10年債と2年債の逆イールドはまだ発生していないのと、逆イールドが発生してからリセッションが起こるまでに時間がかかることから、株価大暴落はまだ先のはずですが、そんな先の未来ではないはずです。
しかし、私は積立&配当再投資戦略の長期投資ならば、今も買い続けるべきと考えています。なぜなら、
- いつリセッションが起こるか読めないから
- 株価の下げ幅がどれくらいか読めないから
仮に長短金利差をウォッチし続けて天井近辺をあてれたとして天井付近で利確できたとしても、下落率が10%、20%で済んでしまうならば、売却価格より高い価格で買い戻さなくてはいけません。
分からなら分からないなりの投資行動をとるべきと思います。
それにしても長短金利差を見ることで「天井臭さ」を知ることができたのは収穫でした。
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